前回の記事で紹介した経営判断の原則。
これは、一定の条件を満たしていれば、経営判断の誤りによって企業に損害を与えたとしてもその責任を問われないという原則です。
この記事では、その責任を問われないための一定の条件について、解説します。
一定の条件とは、以下の3つに大分されます。
①適切かつ合理的と信じる範囲の情報と知識を得ていること ②経営判断が会社にとって最良の利益であると相当の根拠をもって信じること ③情報収集・検討経過についての記録化の必要性
では、各項目について詳しく解説します。
※そもそも経営判断の原則って何?という方はコチラ
①適切かつ合理的と信じる範囲の情報と知識を得ていること
第一の条件は、適切かつ合理的と信じる範囲の情報と知識を得ていることです。
これは要するに、アテになる情報を集めてそれを基に判断したのか?ってコトですね。
経営判断に必要な情報収集をしたかということで、取締役会などの経営会議の各段階において、可能な限り資料や情報を根拠として検討するということです。
具体的に言うと、専門家の鑑定や意見を基にしていることや統計等の正確な情報を基にするということです。
不動産の購入でいれば、不動産鑑定士による評価額や路線価などが該当します。
②経営判断が会社にとって最良の利益であると相当の根拠をもって信じること
第二の条件は、経営判断が会社にとって最良の利益であると相当の根拠をもって信じることです。
これは要するに、会社のプラスになるときちんと検討し判断されたかってコトです。
ここでのポイントは、経営判断を行うときにきちんと
- 議論がなされ
- 会社にとってプラスになるという結論が出た か。ということです。
まず議論がなされたのか。ということですが、物事の判断には、当然多くの意見が出てしかるべきです。YESマンばかりで、ボスの言いなりで同意してしまうのはナシってのハナシですね。ということで実務的には、社外役員から意見が出ているかなんてことを適切に議論がなされたかってことの参考にします。
会社にとってプラスになるという結論が出たかということですが、利益が出ると思ってやったことならば、結果的に失敗だとしてもしゃあないけど、損害が出ると思ってやって、結果的に失敗だとしたらそりゃそうだろ!最初からやるな!って話ですからね。
この際の判断の基準時は、その経営判断がなされたときであって、事後判断ではないということです。
OKなパターンは、例えば不動産の購入の場合、良い不動産だと思って購入したが、購入の後に地震が起きて、地盤が弱いことがわかり、土地の価格が下がってしまった。なんてケースですね。こういうパターンはあくまでも、事後に起こった地震という出来事に起因するため、購入を決めたときは合理的であったといえるため、責任は問われません。
NGなパターンは、例えば交通機関の撤退などにより、不動産価格が今後下がるだろうという判断がされたのにもかかわらず、なぜか不動産を購入するという結論が出て、予想通り損害が出たってカンジですかね。これは、不動産を購入するとき非合理的な結論が出てたのに…って話ですからね。
③情報収集・検討経過についての記録化の必要性
第三に情報収集・検討経過についての記録化の必要性です。
これは、要するに証拠を残しておくということです。
確かに経営判断の原則では、①と②のような条件を満たせば、責任は問われません。ただし、もちろんそのためには証拠が必要となります。
実務的には、議案についての検討資料や議事録をのこすことで、この条件をパスすることになるかと思います。
結局責任を問われるとしたらそれは株主でしょうからね。会社の内部者ではなく、対外的な照明をできる証拠が必要になるというわけです。
まとめ
経営判断の原則として、責任を問われないためには以下の要件を満たす必要があります。
①適切かつ合理的と信じる範囲の情報と知識を得ていること → アテになる情報を集めてそれを基に判断した
②経営判断が会社にとって最良の利益であると相当の根拠をもって信じること → 会社のプラスになるときちんと検討し判断されたこと
③情報収集・検討経過についての記録化の必要性 → 証拠を残しておく
まぁなんていうか…当然っすよね。フツーの会社であればフツーにしていればOKってことです。つまりは経営判断というのは、非常に難しい。そして失敗を認めないようではチャレンジを恐れるようになり、経済全体が停滞してしまうので、よっぽどではない限り経営陣は損害の責任を負わなくていいから頑張ってね!ってコトです。
まぁ株主総会とか取締役会で責任取らされる( 辞めさせられる or選ばれない)ことはありうるんですけどね…そこらへんはまたいずれ!
またねー!
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